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意外と知られていない、天井の役割と構造

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昨今では天井脱落による被害により天井を設置しないケースも見受けられますが、天井には空間を快適に維持するためにいくつもの役割があります。
天井の新設・改修を検討する際は、まずは天井の役割を理解しましょう。
 
 
 

天井の役割とは

 

1、吸音性

 
吸音とは、吸音材(グラスウール、岩綿吸音板等)が音を吸収して、音の反響を小さくすることです。吸音対策とは、その部屋内で発生した音の反射を小さくするために、天井や壁に吸音材を設置し、室内の響きの低減・反射の抑制・室内騒音レベルを低減させることです。

 
天井の「吸音性」が無いことによる体育館のトラブル
 
  • 卒業式で校長先生の声が反響してよく聞き取れなかった(PTA)
  • 体育の授業で生徒が先生の指導を聞き取れなかった(けが発生)
  • 体育館で音楽の発表会ができなくなった(文化祭、学校祭等)
  
 

 

2、遮音性

 
遮音とは、重い遮音材料(コンクリート、ブロック、繊維混入石膏版等)で音を遮ることです。天井等に音が入射した時に、その音のエネルギーを反射し、反対側に抜ける音を小さくすることです。外部の騒音(飛行機や電車、車の音等)を遮断したい音楽ホール等では特に重要視されます。
 

天井の「遮音性」が無いことによる体育館のトラブル
 
  •  建物の外を走る車や電車の騒音で声が聞こえづらい
  •  上空の飛行機やヘリコプターの音がうるさくて声が聞こえない
  •  屋根をたたく雨の音がうるさくて授業にならない

 
 
 

3、温度・湿度の調整

 
天井が高いとあたたかい空気が上に逃げてしまい、下の冷たい空気と混ざりにくくなるため、冷暖房の効率が悪くなってしまいます。
反対に天井が低いと空気が自然に循環しにくくなり、熱や湿気がこもりがちになります。
部屋の用途等に応じて適切な高さの天井を設けることで、温度や湿度を効率よく調整することができます。
 

天井撤去による「区画性能」、「断熱性」等に関するトラブル
 
  • 室内が広くなったために暖房能力が足りず灯油代が倍増した
  • 室内の湿気(塩素)等により屋根の鉄骨の錆が進行した(プール)
  • 天井を撤去した為に排煙窓の位置が法適合しない(武道場)

 
 
 
 

吊り天井とは

 
天井裏には、空調・照明・換気などの設備と、断熱・遮音・吸音などの建築用材料が組み込まれています。これらの設置場所を確保し、性能を維持するために「吊り天井」構造が採用されています。
吊り天井は、天井裏のコンクリート部に金属製のボルトを装着し、ハンガー・野縁受け・クリップ・野縁などの天井下地材を組み合わせて格子状の骨組みを作り、表面を石膏ボードなどで仕上げた構造となっています。
ショッピングモールや工場などの大規模空間を持つ施設をはじめ、多くの建物が「吊り天井」構造となっています。
 
 
 
 

地震による吊り天井の落下・被害の危険性

 
地震が発生した際は、「吊り天井」がブランコのような横揺れを起こし、「吊り天井」の端部が建物本体や壁などに衝突します。
その衝撃で「吊り天井」が壊れて落下したり、地震の揺れによる不規則な力や衝撃で、各部材が変形したり、結合部分が外れてしまうことがあります。
「吊り天井」の重さは1㎡あたり7~20㎏ほどで、その吊り天井に照明器具や空調機器、音響装置が取り付けられてさらに重くなります。音楽ホールなどの遮音性が必要な天井では1㎡あたり60kgになることもあり、重たいものは総重量が60トンを超えることがあります。