平成27年に改正・施行された建築基準法第12条「定期報告制度」では
建物所有者・管理者に特定天井の天井裏の劣化及び損傷の定期点検が義務付けられています。
平成27年1月13日に、国土交通省住宅局建築指導課長より、各都道府県建築主務部長宛てに「特定天井の定期調査について」の技術的助言(国住指第3740号)が出されました。
その後、平成27年4月1日に、「建築基準法第12条及び告示第1073号(既存建築物等の特定天井の定期調査)」が施行され、特定天井の定期調査の差し替え版を追加した「特定建築物 定期調査業務基準(2016年改訂版)」が発行されました。
これらの助言・法律改正により、調査対象が500㎡以上の天井の天井面(旧基準)(平成20年)から、特定天井(天井高6m超、面積200㎡超)(平成27年4月~)に変更となり、天井裏の天井材まで目視で確認し、劣化及び損傷の有無により判定するとなりました。
「特定天井の定期調査について(技術的助言)平成27年1月13日国住指3740号」について解説します。
1.調査方法の改正
天井材の劣化若しくは損傷が最も早く進行すると考えられる箇所(結露等の水ぬれが生じやすい箇所、段差部、壁際、柱形部分等)を目視し判定すること。
2.調査対象の各部材
天井材の種別(斜め部材端部取付金具、吊り材、斜め部材、附属金物、天井下地材、天井板等)毎に少なくとも1箇所以上調査すること。
3.調査方法の詳細
① キャットウォーク等の容易に天井裏の空間に入ることができる設備からの調査
② ①のキャットウォーク等が無い場合は、調査対象を有効に調査できる点検口からの調査
③ ①及び②のキャットウォークや点検口等が無い場合は、天井面に点検口以外の開口又は取外しが可能な照明設備等からの調査
→新たに点検口を設置することが望ましいとされています。
④ ①から③までの全ての設備が無い場合は、新たに点検口を設置する、または、天井裏の点検を行うことが可能となる措置を講じて調査
→天井裏の点検を行うことが可能となる措置を講じることは、すなわち破壊検査が必要となり、天井板の一部を取外す、又は切り取ることになるため、JACCAでは定期的に壊すより点検口の設置を推奨しています。
4.判定方法(劣化及び損傷の判定基準に関する具体的な考え方)
下記の具体例を参考に調査することとされています。
「天井材」の詳細については別ページをご覧ください。
ⅰ)天井材の腐食
・天井材に著しい錆があること
・天井面に水ぬれ又は錆汁による変色があること
ⅱ)天井材の緩み・外れ
・本来接しているべき部材同士(ハンガーとこれを締結するナットなど)の間等に、目視により確認できる
大きさの隙間が生じていること
・クリップやハンガー等の金具が外れている、又は外れかかっていること
・天井板を天井下地材にとめ付けるねじの頭が天井面から著しくへこんでいること
・吊り材の吊り元について、コンクリートのひび割れ等、吊り材との緩みを生ずる損傷があること
ⅲ)天井材の欠損
・天井材に亀裂又は破断している箇所があること
・天井面構成部材の全部又は一部に脱落又は剥落した跡があること
ⅳ)天井材のたわみ
・平面又は概ね一様な曲率をもった曲面として施工された天井面に歪な陰影が生じているなど、天井面に
目視により確認できる変形が生じていること
・天井下地材と天井板との間に局所的に隙間が生じていること
・吊り材の吊り元について、鉄骨部材の変形等、天井材のたわみを生ずる損傷があること
ⅴ)その他の劣化及び損傷
・天井下地材に著しい曲げや潰れ等の変形が生じていること
クリップが外れている様子
ハンガーが変形している様子
定期調査報告は、専門家による建物の健康診断であり、建設後の建物の安全性を確保するために重要とされています。
定期調査報告の重要性や進捗状況について、定期調査報告を運営する建築物防災推進協議会にお話を伺いましたので、詳細はコラム(定期調査報告の重要性や推進状況について)をご覧ください。
JACCAでは天井耐震診断を行っており、上記調査内容を含めた全50項目のチェック項目にて報告書を作成しています。
天井裏の調査は天井の構造を理解している者でなければ正確な調査を実施できません。
天井に関する調査はJACCAにご相談ください。
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